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僕は、10代の頃から東洋の哲学に深く傾倒して、陰陽哲学とか、太極拳とか、指圧とか、聖徳太子とか、岡倉天心とかハマっていたので、「氣」という、いわばエネルギーには慣れ親しんできましたが、この東洋の氣を中心とした健康概念に程なく近い西洋の健康概念があることをその学びの中で知りました。

それは、何千年という歴史を持つ太極拳や、陰陽五行などの哲学に比べて比較的新しいもので、1800年代から1900年の初頭まで哲学、教育、政治、農業、そして医療の世界にまで大きな影響を及ぼしたルドルフ・シュタイナーの医療オイリュトミーというものです。
そもそも、オイリュトミーは、パフォーマンスアートとしての表現形態であり、ダンスとしては一般に認知されていますが、そのダンスそのものが医療的効果のあることはあまり知られていません。
オイリュトミーは、その動きの哲学はシュタイナーの作り上げた「人智学」に根ざしています。ですので、オイリュトミーを知るには、少し「人智学」について説明する必要があります。少し難しい話になるかもしれませんが、ごくごく簡単に大事なところだけ説明します。
人智学が定義する人間構造
人間存在の四重構成
人間は、1. 物質身体、2. エーテル体(生命体エネルギー層、成長、再生、治癒を司る)、3. アストラル体(感情や感覚のエネルギー層)、4. 自我(エゴ、自己意識)の4つで成り立つ。
人間の三分節構造
人間には、1. 神経、感覚系(頭部、思考、神経系)、2. リズム系(心臓・肺・呼吸・循環)、3. 代謝・四肢系(消化、手足、意志、行動)の3系統が存在している。

そして、病や不調は、これらのバランスを崩すことで起こると考えられており、原因によって特化された動きによってこれらを整えることによって治癒されるという考えです。
オイリュトミーが東洋医学と異なって特徴的なのは、言葉が持つ音とそれに呼応した体の動きがエーテル体を活性化させ、体に治癒力をもたらすと考えることです。以下に2つ母音の例をあげてみます。
例:母音が与える臨床効果 「あ」、「え」
「あ」は、開放的で広がる動きと呼応し、呼吸や、胸の開放を助け、循環器系を活性化させるので、臨床での応用としては、呼吸器系を強めたり、不安や、緊張を緩和するために利用されます。
「え」の音は、内への集中と、自己と世界の境界を象徴し、姿勢や、体幹を整え、自律神経のバランスに働きかけるので、姿勢や体幹のアンバランスを矯正したり、不眠や過敏状態に活用されます。
その他すべてのアルファベット、子音、母音の音と、体の動きが対応しており、それが体に働きかけ、エネルギーのバランスを取り戻すのです。

これは、東洋医学が、エネルギーである氣と、五行のバランスに病の原因を理解し、太極拳、気功、導引、そして真言、マントラといった動きと音によってそのバランスを整えることで治療することと合致するばかりか、意識を伴った動きが、身体のみならず、精神や魂にも作用するというオイリュトミー考え方が、洋の東西を超え、太極拳や気功のビジョンと近似していることは大変興味深い事実です。
このように、シュタイナーの築いた人智学を土台にするオイリュトミーは、ダンスとしての表現手段としてのみならず、人間の動き、音、意識を通じて、人間を生命体、魂、霊的存在として調和させ、人間本来の均衡を取り戻すことによって、病を克服し、健康を維持する医療でもあるのです。
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