太極拳がゆっくりである理由 「勁」

あんなゆっくり動いていては武術として役立つはずがない。

太極拳はそもそもその格闘の哲学が、力を重視する動きの空手や、その種のカンフーとは異なり、柔らかいということを重視しています。これは、老子の道徳経にある「柔よく剛を制す」をそのまま体現しており、空手の突きが石で打たれたようだとするなら、太極拳の攻撃は鞭のようだと言えるでしょう。太極拳は、力の武術でなく、エネルギーの武術だと言えるので、そのエネルギーをどう有効に蓄え、使うかという方法論であり、体内のエネルギーの動きを重視します。内功と呼ばれる太極拳のトレーニング法はまさにそれで、並行して太極拳を通し、体内の氣で体が動くこと(体を動かすことで氣を動かすということとは逆説的に)を意識しながらゆっくりと行うのです。

この理論が、太極拳を通常の肉体資本の武術と全く逆の発想を生みます。まずは、体をリラックスさせること、柔軟にすること、また、意識と肉体を一体化すること。これらは全てパワーとしての「勁」(jin 日本語読みだと「ケイ」)を自由に操作するに重要なことなのです。太極拳の攻撃のパワーは「勁」ですので、「勁」を意識しない太極拳はうわべの表面的な太極拳と言っても過言ではありません。

私が最初に太極拳に注目したきっかけは、中国旅行をした時に七十歳はゆうに越している太極拳の先生が、10メートルくらい離れたところから、襲いかかってくる複数の生徒たちを触らずに投げていたのを目撃したことでした。現在受講している太極拳のセッションの中にも推手の際に勁をどう動かすか、相手のパワーをどう地球に流し落とすかというようなことが組み込まれていますが、実際に上達者がやると相手は数メートル簡単に飛んで行きます。

ゆっくり動くことで、気功のような効果を得ることもできます。気功は氣を重要なポイントに集めたり、拡散したり、動かしたりすることで健康・治癒効果を得ることを目的としています。このような目的を持った太極拳は、アメリカでは、「太極」(タイチー)と呼び、武術を意識したものを「太極拳」(タイチー・チェン)と分けて呼んでいる人が多いのです。

太極拳はまさに道教の老荘思想の実践であり、氣の流れを重要視することから中医学的健康法であり、内功が道教で悟りの道、不死の教えでもあることから精神的、スピリチュアルな修行法であり、また武術としても護身術として役立つものだと思えます。

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